工場のIoT化や設備データの活用に取り組もうとしたとき、
「専用システムは高すぎる」
「PLCは触れるが、ITやクラウドは難しい」
と感じたことはないでしょうか。
近年、こうした課題を背景に、Node-RED が産業分野で急速に存在感を高めています。
Node-REDは視覚的なフローベース開発環境を備えたオープンソースツールで、ModbusやOPC UAといったOT側のプロトコルと、MQTTやHTTPなどIT側の技術を“つなぐ役割”を担います。
実際、世界的な産業用PCメーカーや装置ベンダーがNode-REDを公式に採用し、
単なる試作ツールではなく実運用を前提とした産業用ミドルウェアとして位置づけています。
本記事では、Node-REDがなぜ産業用途で選ばれているのかを技術的に整理しつつ、
「どこまで任せられて、どこからは注意が必要なのか」
そして 現場で止まらないNode-REDをどう設計するべきか を、実装視点で解説します。
なぜ今、産業用アプリケーションにNode-REDなのか
製造業やインフラ分野では、OT(制御・設備)とIT(情報・クラウド)を分断したままでは競争力を維持できない時代に入りました。
設備の稼働状況、エネルギー消費、品質データをリアルタイムに収集し、分析・最適化へつなげることが求められています。
この流れの中でNode-REDが評価されている理由は、OTとITの“境界”に立ち、両者を無理なく接続できる点にあります。
PLCやセンサーから取得したデータを、そのままクラウドに投げるだけでは、通信量・セキュリティ・運用負荷の問題が必ず顕在化します。Node-REDはエッジ側でデータを加工・選別・条件判定し、「意味のある情報だけを上位へ渡す」役割を担います。
また、フローベース開発という特性により、高度なプログラミングスキルを持たない現場エンジニアでも
処理の流れを“見える形”で理解・保守できる 点も大きな強みです。
この章では、Node-REDが
- なぜOTとITの橋渡し役として適しているのか
- なぜ“現場で使われるOSS”として定着しつつあるのか
という視点から、その本質を整理していきます。
OTとITをつなぐ「デジタル・グルー」としてのNode-RED
産業分野におけるDXの本質は、OT(制御・設備)とIT(情報・クラウド)の分断をいかに自然につなぐかにあります。従来、PLCやDCSは安定性と安全性を最優先に設計され、外部システムとの接続は最小限に抑えられてきました。一方、IT側ではクラウドやデータ分析が前提となり、両者の技術思想には大きな隔たりが存在します。
Node-REDは、この断絶を埋める「デジタル・グルー」として機能します。ModbusやOPC UAといったOT側のプロトコルを受け取り、MQTTやHTTPなどIT側の技術へ変換・中継する役割を担うことで、設備データを無理なく上位システムへ連携できます。重要なのは、Node-RED自身が制御の主体になるのではなく、既存のOT環境を尊重した上で“橋渡し役”に徹する点です。
この位置づけにより、制御系の安全性を維持したまま、データ活用や可視化、分析といったIT的価値を現場へ持ち込むことが可能になります。Node-REDが産業用途で評価されている理由は、この絶妙な役割分担にあります。
視覚的フロー開発が“現場エンジニア”の武器になる理由
Node-REDの最大の特徴は、処理の流れを「コード」ではなく「フロー」として視覚的に表現できる点にあります。これは単なる使いやすさではなく、産業現場において非常に大きな意味を持ちます。現場では、IT専任のエンジニアではなく、設備や工程を熟知した保全担当者がシステムに関わる場面が多いためです。
フローベース開発では、「どのデータが、どこから来て、どこへ流れていくのか」が一目で分かります。条件分岐や変換処理もノードとして可視化されるため、属人化しにくく、引き継ぎや保守が容易になります。これは、ブラックボックス化しがちなスクリプト開発と大きく異なる点です。
また、トラブル発生時にもフローを見れば影響範囲を即座に把握でき、復旧対応が迅速になります。Node-REDは「プログラミングができない人のためのツール」ではなく、「現場エンジニアが自らシステムを理解・改善できる環境」を提供する点で、産業用途に適した開発手法だと言えます。
ライセンスフリーという圧倒的コストメリット
産業用アプリケーション開発において、コストは常に大きな制約条件となります。従来のSCADAやIoTプラットフォームは、初期ライセンス費用に加え、デバイス数やタグ数に応じたランニングコストが発生するケースが少なくありません。その結果、小規模現場や部分導入では費用対効果が合わず、DXが進まない要因となってきました。
Node-REDはオープンソースで提供されており、ライセンス費用が発生しません。この点は単なる“安さ”ではなく、設計の自由度を大きく高めます。まずは小規模に導入し、効果を確認しながら段階的に拡張する、といったスモールスタートが現実的になります。
さらに、OSSであることで特定ベンダーに縛られず、将来的な構成変更や他システムとの統合もしやすくなります。コストを抑えつつ、長期的な拡張性と柔軟性を確保できる点は、Node-REDが産業用途で選ばれる大きな理由のひとつです。
Node-REDの技術構造は産業用途に耐えられるのか
Node-REDは「簡単に使える」「視覚的で分かりやすい」という印象が先行しがちですが、産業用途で重要なのはその内部構造が現場要件に耐えられるかどうかです。
Node-REDの基盤はNode.jsであり、イベント駆動型・ノンブロッキングI/OというWeb由来の設計思想を持っています。この構造は、多数のセンサーやデバイスから同時にデータを受信し、それを加工・転送する用途に非常に適しています。
一方で、PLCのような定周期スキャンやミリ秒単位の確実な制御とは思想が異なります。
また、Node.jsはガベージコレクションを伴うメモリ管理を行うため、24時間365日稼働する産業システムでは、設計を誤ると遅延や停止につながるリスクも存在します。「動くかどうか」ではなく、「長期間安定して動き続けるか」という視点が欠かせません。
重要なのは、Node-REDをPLCの代替として使おうとしないことです。Node-REDは制御そのものではなく、
- データ収集
- 上位連携
- 条件判定
- オーケストレーション
といった領域で真価を発揮します。
この章では、Node-REDの技術アーキテクチャを冷静に分解し、「できること」「注意すべきこと」「任せるべきでないこと」を明確にしながら、産業用途で安全に使うための考え方を整理していきます。
イベント駆動型・ノンブロッキングI/Oの強みと注意点
Node-REDの基盤であるNode.jsは、イベント駆動型かつノンブロッキングI/Oというアーキテクチャを採用しています。この構造は、センサーやデバイス、外部APIなどから多数のデータを同時に受け取る場面で真価を発揮します。ネットワーク遅延や一部の応答待ちが発生しても、全体の処理が停止しにくく、エッジゲートウェイとして非常に効率的です。
一方で、この仕組みは万能ではありません。Node.jsはシングルスレッドで動作するため、画像処理や複雑な暗号化計算など、CPUを長時間占有する処理が混在すると、イベントループ全体が滞り、他の通信や制御に遅延が生じます。産業用途では「どの処理をNode-REDに任せ、どこからは別プロセスや専用機に分離するか」を明確にする必要があります。
Node-REDは“多くの軽い処理を同時にさばく”ことに強い一方、“重い処理を一気に実行する”用途には向きません。この特性を理解した設計こそが、安定稼働の前提となります。
24時間稼働で問題になるメモリ管理とGC対策
産業用アプリケーションでは、システムが24時間365日停止せずに動き続けることが求められます。Node-REDはNode.js上で動作するため、メモリ管理はV8エンジンのガベージコレクション(GC)に依存します。この挙動を理解せずにフローを設計すると、長時間運用時にメモリ消費が増大し、動作遅延やプロセス停止を招く恐れがあります。
特に注意が必要なのが、グローバル変数へのデータ蓄積や、大きなメッセージオブジェクトを使い回す設計です。これらはGCの負荷を高め、エッジデバイスの限られたメモリ資源を圧迫します。対策としては、不要なデータを早期に破棄するフロー設計や、Node.jsのヒープサイズを明示的に制御する起動オプションの活用が有効です。
また、PM2などのプロセスマネージャーを用いた自動再起動や死活監視も、産業用途では一般的な運用手法です。Node-REDを安定して使うには、「止まらない設計」と同時に「止まっても即復帰する設計」が重要になります。
「ハードリアルタイム」はできないという前提理解
Node-REDを産業用途で使う際に、最も誤解されやすい点がリアルタイム性です。PLCの世界では、数ミリ秒単位で周期実行が保証されるハードリアルタイム制御が当たり前ですが、Node-REDは汎用OS上で動作するため、同じ性質を持ちません。ガベージコレクションやOSスケジューリングの影響を受けるため、厳密な周期制御は保証できません。
しかし、これはNode-REDの欠点ではなく、役割の違いと捉えるべきです。Node-REDはソフトリアルタイム領域、つまりデータ収集、状態監視、条件判定、上位連携といった用途に最適化されています。高速モーション制御や安全系インターロックはPLCに任せ、Node-REDはそのパラメータ管理や可視化を担う。この分業が現実的な設計です。
この前提を正しく理解すれば、Node-REDは制御系を脅かす存在ではなく、むしろPLCの価値を引き立てる存在になります。産業用途で成功するかどうかは、ツール選定ではなく、この役割分担を設計段階で描けるかにかかっています。
Node-REDが公式採用される産業用ハードウェアの実例
Node-REDが産業分野で信頼を獲得している大きな理由のひとつが、主要な産業用ハードウェアベンダーが公式にNode-REDを採用・組み込みしているという事実です。これは単なる流行や実験的採用ではなく、「産業用途に十分耐えうる」と判断された結果だと言えます。
多くの現場では、Raspberry Piのような汎用デバイスを使ったPoCからスタートしますが、量産ラインやインフラ監視へ展開する段階で、耐環境性・長期供給・保守性といった課題に直面します。
このフェーズで重要になるのが、産業グレードのハードウェア上でNode-REDをどう位置づけるかという視点です。
Siemens、Advantech、Moxaといった企業は、自社の産業用ゲートウェイやエッジデバイスにNode-REDを組み込み、「制御はPLC」「連携とロジックはNode-RED」という役割分担を明確にしています。
これは、Node-REDの特性を正しく理解した上での、非常に現実的なアーキテクチャです。
この章では、
- なぜ大手ベンダーがNode-REDを採用しているのか
- どのような使い方を前提に設計されているのか
- 現場導入時に参考にすべき設計思想は何か
といった観点から、産業用ハードウェアとNode-REDの関係を整理していきます。
Siemens SIMATIC IOT2050に見る“OT前提”のNode-RED活用
SiemensのSIMATIC IOT2050は、産業用ゲートウェイとしてNode-REDを公式に採用している代表例です。これは「Node-REDが産業用途に耐えない実験的ツールではない」ことを示す、極めて象徴的な事実と言えます。IOT2050はDebianベースの産業向けOSを搭載し、EthernetやシリアルといったOT現場必須のインターフェースを標準装備しています。
特徴的なのは、Node-REDが単なる付属ツールではなく、OTとITをつなぐ中核コンポーネントとして位置づけられている点です。ModbusやOPC UAなどで収集したデータを、MQTTやREST APIへ変換し、上位システムやクラウドへ橋渡しする用途が想定されています。
一方で、Node.jsのバージョンとI/O制御ライブラリの依存関係には注意が必要です。IOT2050ではI/O制御を重視するか、通信ハブとして使うかで設計判断が分かれます。この点は「何でもNode-REDでやらない」という産業設計の重要性を示しています。
Advantech ADAM-6700が実現する“センサー直結型Node-RED”
AdvantechのADAM-6700シリーズは、Node-REDを内蔵した産業用リモートI/Oとして注目されています。従来のリモートI/Oはデータを送るだけの存在でしたが、このシリーズではLinux上でNode-REDが動作し、センサー入力からデータ処理までをエッジ側で完結できます。
4-20mAや0-10Vといったアナログ信号を直接取り込み、その場で平均化や異常検知を行い、必要なデータだけを上位へ送信する構成が可能です。これにより通信量を抑えつつ、リアルタイム性の高い判断を現場側で実行できます。まさにエッジコンピューティングの実装例と言えるでしょう。
Node-REDのフローベース設計は、現場エンジニアがロジックを視覚的に把握・修正できる点でも有効です。制御盤内にPCを別途設置せず、省スペースで高度な処理を実現できることから、小規模ラインや分散設備での導入が進んでいます。
Moxa ThingsProとNode-REDによる通信管理の抽象化
Moxaは産業用通信の堅牢性に定評のあるメーカーで、Node-REDとの組み合わせではThingsProというミドルウェアを軸にしたアプローチを採っています。ThingsProはModbusデバイス管理や通信設定をGUIで抽象化し、その結果をNode-REDやMQTTへ安全に提供します。
通常、Node-REDでModbus通信を扱う場合、レジスタ定義やポーリング制御を個別に設計する必要があります。ThingsProを介すことで、これらの煩雑さを減らし、Node-RED側はロジック構築に専念できます。これは大規模設備や多拠点展開において、保守性を大きく高める設計です。
また、Moxaのゲートウェイは広温度対応やLTE通信に強く、屋外インフラ監視との親和性が高い点も特徴です。Node-REDはデータ整形やイベント検知を担い、通信断時のバッファリングなど実務的な役割を果たします。Node-REDが“現場を知る通信司令塔”として機能する好例です。
Node-REDが最も真価を発揮する通信プロトコル統合
Node-REDが産業用アプリケーションで評価される最大の理由は、異なる通信プロトコルを自然につなぎ、ひとつのデータフローとして統合できる点にあります。
製造現場やインフラ設備では、
- レガシー設備はModbus
- 上位制御はOPC UA
- クラウド連携はMQTTやHTTPS
といったように、世代や役割の異なるプロトコルが混在するのが当たり前です。
この“プロトコルの断絶”こそが、現場DXを進めるうえで最大の障壁となってきました。
Node-REDは、これらのプロトコルをノードとして吸収し、「どのデータを、いつ、どこへ、どの形式で渡すか」を視覚的なフローとして設計できます。コードで個別に実装する場合と比べ、全体像が把握しやすく、保守性も高まります。
また、単なる中継ではなく、
- ポーリング制御
- データ型変換
- 条件判定
- フィルタリング・集約
といった処理をエッジ側で行える点も重要です。
これにより、ネットワーク負荷やクラウドコストを抑えつつ、“意味のあるデータだけ”を上位へ送る設計が可能になります。
この章では、Node-REDが特に力を発揮するModbus・OPC UA・MQTTといった産業用プロトコル統合の考え方を整理し、現場で失敗しにくい設計ポイントを解説していきます。
Modbus TCP/RTUを安定運用するための設計ポイント
Modbusは最も普及している産業用通信プロトコルですが、Node-REDで扱う際には特有の注意点があります。Node-REDはイベント駆動型である一方、Modbusはポーリング型通信であるため、複数のリクエストを無秩序に発行すると、特にRS-485環境では通信衝突やタイムアウトが頻発します。これを防ぐには、リクエストをキューイングし、順序制御を行う設計が不可欠です。
実装では、単純なReadノードの多用を避け、ポーリング周期と同時接続数を明確に定義することが重要になります。また、Modbusレジスタは16bit単位のため、実際の計測値として使うにはデータ型変換が必要です。浮動小数点数や32bit整数への変換では、バイトオーダーの違いがトラブルの原因になりやすく、実機確認を前提とした検証が欠かせません。
Node-REDはModbusを「制御の中心」にするのではなく、既存設備を活かすための橋渡し役として使うことで、その柔軟性を最大限に発揮します。
OPC UAがもたらすセキュアで拡張性の高い接続
OPC UAは、Industry 4.0時代の中核となる産業用通信規格です。Node-REDはOPC UAクライアントとして動作し、PLCやサーバーのアドレス空間をブラウズしながら、必要なデータを購読できます。これにより、値の変化をイベントとしてリアルタイムに受信でき、ポーリング負荷を抑えた効率的な通信が可能になります。
大きな特徴は、セキュリティ機構が標準で組み込まれている点です。証明書による相互認証や暗号化通信に対応しており、従来のModbusと比べて情報漏洩リスクを大幅に低減できます。ただし、その分、証明書管理や初期設定は複雑になりがちで、実装段階での理解不足が導入障壁になることもあります。
Node-REDをOPC UA連携に使う場合は、「すべてを購読する」のではなく、必要なノードに絞る設計が重要です。これにより通信負荷と運用コストを抑えつつ、将来的な拡張にも対応できる構成が実現します。
MQTT/Sparkplug BによるIoT向けデータ連携
MQTTは軽量で柔軟な通信プロトコルとして、Node-REDとの親和性が非常に高い技術です。Node-REDはブローカーにもクライアントにもなれるため、エッジとクラウドをつなぐ中継点として活用できます。特に産業用途では、単なるMQTTではなく、Sparkplug B仕様の採用が進んでいます。
Sparkplug Bはデータ構造やデバイスの生死監視を標準化しており、通信断が発生した際のシステム挙動を明確に定義できます。これにより「値が来ていない」のか「装置が停止している」のかを区別でき、監視システムとしての信頼性が向上します。Node-REDはこのメッセージを解釈し、アラート発報や再送制御といったロジックを柔軟に組み込めます。
さらに、クラウド連携時には、エッジ側でデータを間引き・集約することで通信コストを削減できます。Node-REDは、IoT通信を単なる転送ではなく「意味のある情報」に変換する役割を担います。
そのまま使うのは危険|産業用Node-REDのセキュリティ
Node-REDは「すぐに動く」「試しやすい」ことを重視して設計されています。
そのため、初期状態のまま産業ネットワークに接続するのは非常に危険です。
開発用途としては便利でも、実運用を前提としたセキュリティ対策は、利用者側が意識的に実装しなければなりません。
特に問題となるのが、管理画面への認証が弱いことや通信が暗号化されていないといった設定不備です。これらは攻撃者から見ると“入口が開いたまま”の状態であり、最悪の場合、フロー改ざんや設備停止といった深刻な被害につながります。
産業用アプリケーションでは、「動けばよい」ではなく「想定外の操作をさせない」「侵入されても被害を最小化する」という視点が欠かせません。Node-REDは柔軟なツールであるがゆえに、設計段階でセキュリティを組み込むことが重要になります。
この章では、Node-REDを産業環境で安全に使うために、最低限押さえるべきセキュリティ設計の考え方を整理し、なぜ“プロの実装”が必要になるのかを明らかにしていきます。
初期設定のままは危険|Node-REDに必須のセキュリティ対策
Node-REDは導入のしやすさを重視して設計されているため、初期状態ではセキュリティ機能が最小限に抑えられています。この状態で産業ネットワークに接続すると、不正アクセスや情報漏洩のリスクが一気に高まります。特に管理画面へのアクセス制御を行わないまま運用することは、制御システム全体を外部にさらすことと同義です。
最低限実施すべき対策として、管理者認証の有効化と通信の暗号化が挙げられます。管理画面には強固なパスワード認証を設定し、認証情報は必ずハッシュ化して保存します。また、HTTPではなくHTTPSを使用し、通信経路上での盗聴を防ぐことが重要です。これらは特別な高度技術を必要とせず、設定ファイルの調整だけで実現できます。
Node-REDは便利である一方、「そのまま使える=安全」というわけではありません。産業用途では、導入初期のセキュリティ設計が、その後の安定運用を大きく左右します。
運用トラブルを防ぐための権限管理と設定分離
産業用アプリケーションでは、開発者・保全担当者・運用管理者など、複数の立場の人が同じシステムに関わります。そのため、全員が同一権限でNode-REDを操作できる状態は、誤操作や設定破壊の原因になりかねません。ここで重要になるのが、役割ごとに権限を分離する運用設計です。
Node-REDでは、編集権限と閲覧権限を分けることで、現場担当者には「見るだけ」、管理者のみが「変更できる」といった制御が可能です。また、認証情報や外部接続設定はフローとは別ファイルで管理されるため、これらを適切に暗号化し、バックアップ対象として明確に分離することが求められます。
さらに、Functionノードによる自由なコード実行は柔軟性が高い反面、意図しない挙動を引き起こすリスクもあります。実運用では、必要最小限の機能に絞り、誰が・どこまで触れるのかを明確に定義することで、長期的に安定した運用が可能になります。
長期安定稼働のための運用・保守設計
Node-REDを産業用途で使う場合、導入時の設定以上に重要なのが運用・保守の設計です。24時間365日の連続稼働を前提とする現場では、突発的な停止やメモリ枯渇が生産活動に直結する影響を及ぼします。そのため、「止まらない仕組み」を前提とした設計が不可欠です。
具体的には、プロセスマネージャーを用いた自動再起動や、メモリ使用量の監視、定期的なログ整理などが挙げられます。また、ソフトウェアのアップデートを安易に行うと、ライブラリ依存関係の不整合が発生する可能性があるため、検証環境を分けた段階的な更新が望まれます。
Node-REDは単体で完結させるのではなく、既存の制御機器や監視システムと役割分担することで真価を発揮します。運用設計まで含めて考えることで、Node-REDは「試作ツール」ではなく、信頼できる産業用ミドルウェアとして機能します。
SCADAWORXが提供する「産業用Node-RED実装」
Node-REDは非常に柔軟で強力なツールですが、「導入しただけ」で産業用アプリケーションとして成立するわけではありません。現場で長期間安定して稼働させるためには、ツール選定以上に設計と実装の質が重要になります。
多くの現場では、PoC段階では問題なく動いていたNode-REDが、本番運用に入った途端に
「通信が不安定になる」
「負荷がかかると応答が遅れる」
「誰も全体構成を把握できなくなる」
といった課題に直面します。
これはNode-REDそのものの問題ではなく、産業用途としての設計が不足していることが原因です。
SCADAWORXは、Node-REDをPLCや既存制御の“代替”としてではなく産業システム全体をつなぐ“中核レイヤー”として位置づけた設計を行います。制御はPLCに任せ、Node-REDはデータ収集・条件判定・上位連携に集中させることで、それぞれの技術が最も力を発揮できる構成を作ります。
また、FUXAやiFEMS、産業用ラズパイなどと組み合わせることで、
可視化・遠隔監視・エネルギー管理までを一貫したアーキテクチャで提供できる点も特徴です。
単なるツール導入ではなく、「現場で止まらず、運用し続けられるNode-RED」を実装する。
それがSCADAWORXの提供価値です。
PoCで終わらせない、産業レベルのNode-RED実装設計
Node-REDは導入のハードルが低く、短期間でプロトタイプを構築できる点が魅力です。しかし、実際の製造現場やインフラ運用においては「動くこと」以上に「止まらないこと」「長く使えること」が求められます。SCADAWORXは、Node-REDを単なる試作ツールとして扱うのではなく、産業システムの一部として成立させるための設計思想を重視しています。
具体的には、Node-REDが担う役割を明確に定義し、リアルタイム制御や安全系処理はPLCや専用コントローラに任せ、Node-REDは「データ統合・変換・判断」に専念させます。これにより、ソフトリアルタイムというNode-REDの特性を前提とした、無理のないアーキテクチャが実現します。PoCから量産・常設システムへ移行する際の落とし穴を避けることが、安定運用への第一歩です。
産業用ハードウェアと組み合わせた最適な構成提案
Node-REDの信頼性は、実行環境となるハードウェア選定に大きく左右されます。一般的なRaspberry Piは検証用途には適していますが、耐環境性や長期供給の観点では産業用途に不安が残ります。SCADAWORXでは、産業用PCや産業用ラズパイを前提とした構成を採用し、温度条件・電源品質・設置環境まで含めて検討します。
また、ハードウェア固有の制約やOS・Node.jsのバージョン依存性を踏まえた設計を行うことで、「アップデートしたらI/Oが動かなくなった」といった現場トラブルを回避します。Node-REDを単体で導入するのではなく、PLC、IoTゲートウェイ、SCADAとの役割分担を整理した全体設計を行う点が、自己構築との大きな違いです。
セキュリティ・運用まで含めた“任せられる”実装支援
産業用途におけるNode-RED導入で見落とされがちなのが、セキュリティと運用設計です。初期設定のままでは、管理画面への不正アクセスや認証情報漏洩のリスクが高く、工場ネットワーク全体の脆弱性につながります。SCADAWORXでは、認証・暗号化・ネットワーク分離を前提としたセキュリティ設計を標準で組み込みます。
さらに、導入後の運用を見据えた設計も重視しています。自動再起動やログ管理、バックアップ設計を含め、「誰が・いつ・どう保守するのか」を明確にした状態で引き渡すことで、属人化を防ぎます。Node-REDを安心して使い続けられる環境を整えることが、結果的に現場のDXを前進させます。
まとめ|Node-REDは産業DXの主役になれるのか
Node-REDは、もはや試作や検証だけのツールではありません。
OTとITが交差する現場において、異種システムをつなぎ、データを活かすための実務的なミドルウェアとして確かな地位を築きつつあります。
視覚的なフローベース開発、豊富な産業プロトコル対応、オープンソースによるコストメリット。
これらは、これまで高額な専用システムでしか実現できなかった領域を、中小規模の製造業やインフラ事業者にも現実的な選択肢として開放しました。
一方で、Node-REDは万能ではありません。リアルタイム制御や安全系の処理はPLCや専用コントローラに任せ、Node-REDは収集・連携・判断・可視化に専念させる。
この役割分担を誤らないことが、産業用途で成功する最大のポイントです。
SCADAWORXは、Node-REDを単なるツールとしてではなく、産業システム全体を支える“構成要素”として設計・実装します。PoCで終わらせず、現場で止まらず、将来の拡張にも耐える。
その前提に立ったNode-RED活用こそが、これからの産業DXを支えていくのです。